Special Interview
世界で活躍する卒業生
これから大学で建築を学ぼうとする
若者へのメッセージ
場所の記憶から建築をつくる
私はまだ誰もみたことのない、経験したこともない、想像すらしたことのない、そんな建築をつくりたいと思っています。でも、それは新しい未来型の建築とはちがう、場所の記憶が未来へと継承されていく建築、そんな途方もないことを考えています。
建築の仕事は、いま現在の常識や制約や既成概念にとらわれるのではなく、未来を切り拓くために思考を深く掘り下げる力が問われます。世界は毎日動いています。グローバル化と情報化が進んだ今日では、国や地域をまたいで多くの情報を簡単に手に入れることができる時代になりましたが、いま目の前にある土地、その土地の人類史、気候風土、環境の変化や影響なども含めて、膨大な出来事をどのようにして建築につなげるか。そのような問い掛けから建築の想像ははじまります。そして、こうした試行錯誤の旅路から、未来へと飛躍させる想像がかき立てられ、より深く、より長く、より遠い未来へと導く建築を創り出しているのです。
これから皆さんは建築を学んでいかれると思います。その時、ひとつだけ憶えていてほしいことがあります。それは「建築は世界にたったひとつの場所に建てられ、その場所の記憶と未来をつなぐことができる」ということです。誰かのために、その場所のために、遠い過去から学び、未来をつくる、それが建築家の仕事です。設計の授業や課題では、建物を設計するために構造や設備、法律や素材など、たくさんの正しいことを学んでいくことでしょう。しかしながら、建築を考えるということは、歴史や社会、音楽や文学、生態系から天文学など、発想には自由が与えられているのです。それは「建物を設計することと建築をつくること」は別の次元で、現実の問題を解くことと、未来を想像していくことと同じように異なるのです。
建築は時代を越え、ひとからひとへと受け継がれ、時間の記憶装置となって社会や文化の遺伝子として継承されます。建築は生きていて、ひとの心を動かす力があります。物質ではない人々の記憶が建築に宿り、またそこから未来の記憶が生まれ、人々をつなげていきます。皆さんも自分の信念を貫き、志高く、失敗を恐れず、ぜひ建築と向き合ってください。
Kofun Stadium - New National Stadium Japan :
Atelier Tsuyoshi Tane Architects / image courtesy of DGT.
hirosaki Drone : Daici Ano
田根 剛 T. Tane
建築家。1979年東京生まれ。
北海道東海大学芸術工学部建築学科卒業。
Atelier Tsuyoshi Tane Architectsを設立。
フランス・パリを拠点に活動。
それぞれの作品ごとに環境があり、想いがあり、出会いがある。
設計の仕事は大切な経験であふれています。
上村育美さん
2005年度大学院工学研究科修士課程修了
東 環境・建築研究所 一級建築士
中村 允哉さん
2011年度修了
大手総合建設会社で施工管理
株式会社大林組
齋藤 敦さん
2002年度卒業
公務員の建築職で様々な仕事
足立区役所
篠原 史彦さん
2002年度修了
大手総合設計事務所で設備設計を担当
株式会社日本設計